それでも買う!狂乱の市場に克つ! マンション 最強の売買&管理術#27Photo:DNY59/gettyimages

49万9000戸と国内で最大の管理戸数を誇る日本ハウズイングが米ゴールドマン・サックスと組み、創業家によるMBO(経営陣による株式買い取り)で株式を非公開化した。最大手の上場廃止により、管理業界には公開企業がなくなった。人件費高騰などに代表される管理コストの上昇で、管理業界の利益と市場は縮小の一途だ。マンション管理は「持続可能な事業」なのか?特集『それでも買う!狂乱の市場に克つ! マンション 最強の売買&管理術』(全33回)の#27では、管理会社ランキングの「会社パワー度」項目を分析しながら、管理業界のこれからを展望しよう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

ついに上場企業がなくなったマンション管理業界
抱えたストックがリスクになる状態に

 2024年9月、国内最大の約50万戸の管理戸数を持つ日本ハウズイングは、米ゴールドマン・サックスと組みMBO(経営陣による株式買い取り)を行った。日本ハウズイングは13年に東急コミュニティーが上場を廃止した後、マンション管理会社で唯一の上場企業だった。これでマンション管理業界からは上場企業が一社もなくなった。

 日本ハウズイングは「労働集約型の事業が主で、将来の人手不足が想定されるとともに近年拡大してきた海外事業の収益性の低下が見られる。これに対応するため一時的に利益水準が落ちる積極的な投資が必要と判断した。上場を維持し株主利益を重視したままではこれが難しい」とMBOの理由を説明している。流動性が低く東京証券取引所の上場廃止基準に抵触するという理由もあったと思われるが、管理業界にとっては一時代の終わりを象徴するニュースだった。

 これまで、一度管理委託契約を取れば長期間安定して売上高が稼げていたマンション管理事業は、不動産業界の中でも珍しいストックビジネスと目され、業界の内外からしばしば買収やM&Aの対象として狙われてきた。

 上記の日本ハウズイングも08年に原弘産(現REVOLUTION)から敵対的買収を仕掛けられ、その後リログループと合人社計画研究所から出資を受けた経緯がある。東急コミュニティーは21年、08年に民事再生法を申請したダイア建設傘下のコミュニティワンを統合した。合人社はパナソニック ホームズ、積水化学工業、オープンハウス、第一交通産業、名鉄都市開発、ボルテックスなどと合弁会社をつくり、さらにトーメン建物管理を100%子会社化している。また、コスモスイニシアの子会社だったコスモスライフは親会社の大和ハウスグループ入りで大和ライフネクストとなるなど、合従連衡も激しい。

 管理戸数が多ければ多いほど、大規模修繕工事などの付帯的ビジネスを受注できるチャンスも増える。量こそパワーと見なされており、だからこそ戸数を多く抱える管理会社の争奪戦が起きていたわけだ。

 だが、今回の日本ハウズイングのMBOは、これまでの量を求める合従連衡と全く異なる性質のものだ。それは、管理業界がこれまで経験したことのない「抱えたストックが逆回転する」という事態が起こっているからだ。

 本特集#26で取り上げた管理会社パワーランキングのうち、業績関連項目を分析してみると、異変の背景が明らかになる。管理業界に今何が起こっているのか。次ページから詳しく見ていこう。