「ビジネス書なのに、なぜか子供が夢中で読んでます!」
こんな感想が寄せられているのが、2024年の年間ベストセラー4位(ビジネス書単行本/トーハン調べ)となった話題の書『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』だ。論理的思考問題とは、知識や難しい計算はいっさい不要で、「考える力」のみが問われる問題を指す。小中学校の受験問題、就職試験問題、Google、Apple、Microsoftといった超一流企業の採用試験などでも出題され、これまでの正解が通用しない時代に必要な「思考力」を鍛える“最高の知的トレーニング”でもある。
ではこの論理的思考問題、人間よりも賢いと言われる「AI」は解くことができるのだろうか? この記事では、本書から1問を選んでAIに出題し、思考の過程と、導き出した回答を紹介しよう。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

人とAI、「頭がいい」のはどちらか?
論理的思考問題は、世界中で創作され、何百年にもわたって楽しまれてきました。
この「人が創り、人が解いてきた」問題、人間より賢いと言われる「AI」は解くことができるのでしょうか?
そこで、「論理的思考問題」の定義をしたうえで、書籍『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から1問を抜粋して、AIに下記のように聞いてみました。
・知識や難しい計算は不要で、問題文を読んで論理的に考えれば答えが出せる
・必要な情報は、問題文に書かれていることのみ
上記の定義を踏まえて、下記の「論理的思考問題」を解いてください。
「消えた1000円」
あなたは、2人の同僚と一緒にホテルに泊まりに来た。
宿泊料は1人1万円、合計3万円を受付係に渡した。
ところがその後、3人の場合、宿泊料は2万5000円だったと気づいた受付係は、5000円を返そうとした。
しかし受付係は「5000円は3人で割れない」と考え、2000円をポケットにしまい、残りの3000円を3人に返金した。
3万円を支払った後で3000円返ってきたので、3人は合計2万7000円を支払ったことになる。
受付係がくすねた2000円を足すと2万9000円。
残りの1000円はどこに消えたのだろう?
なおAIは「ChatGPT 4o」を使用し、AIへの質問とAIによる回答の内容は実際のものから変えずに、文字のサイズ、色、太さの変更のみ編集しています。
さて、AIの回答はいかに?
AIの回答
この「消えた1000円」問題は、「数字の足し算の誤用によって“謎”が作られている」典型的な論理的思考問題(パラドックス風なトリック問題)です。
■結論:1000円は“消えて”いない。
「2万7000円(支払額)+2000円(くすねた額)」という足し算が“間違っている”から混乱しているだけです。
■論理的に整理してみましょう
最初の支払い:
・3人が1万円ずつ支払い、合計3万円。
本来の宿泊料:
・実際には2万5000円だった。
差額の5000円の処理:
・2000円 → 受付係がポケットに入れた(不正取得)
・3000円 → 3人に1000円ずつ返金
■正しい構造は?
返金後、3人が実質払った金額はこうなります:
・各人:1万円支払 → 1000円返金 → 実際の支払い額は9000円
・3人分:9000円 × 3人 = 2万7000円
この2万7000円の内訳は:
・2万5000円 → ホテルに支払われた正規の料金
・2000円 → 受付係がこっそり取った分
合計:2万5000円 + 2000円 = 2万7000円
■なぜ「2000円を足してしまうと」おかしくなるのか?
問題文はこう言っています:
3人は2万7000円支払った。
受付係が2000円くすねた。
⇒ 2万7000円 + 2000円 = 2万9000円。残りの1000円は?
これは「既に支払った中に含まれている2000円を“さらに足して”しまっている」ため、論理的に破綻しています。
■シンプルな理解のための比喩
たとえば、あなたが1000円の商品を買って、200円の釣り銭を受け取ったとします。
・商品代:1000円
・支払い:1000円
・返金:200円
このとき「支払った1000円 + 返ってきた200円 = 1200円。あれ、200円多い?」とはなりませんよね。
■正しい問いの立て方
「3人が支払った2万7000円は、何に使われたのか?」
・答え:
→ 2万5000円(ホテル代)
→ 2000円(受付係の着服)
= 合計 2万7000円
→ 問題なし!
■まとめ
この問題の“謎”は、計算の方向性を誤らせて読者を混乱させるトリックです。
「足すべきでないものを足している」
→ だから“1000円が消えたように錯覚”するのです。
実際には、1000円はどこにも消えていません。
ふむふむ、なるほど…。
ではこの回答、正しいのでしょうか?
次ページで、書籍で紹介した解説と回答を紹介します。