なぜ中国はアフリカを援助するのか? 本当の狙いにゾッとする
「経済とは、土地と資源の奪い合いである」
ロシアによるウクライナ侵攻、台湾有事、そしてトランプ大統領再選。激動する世界情勢を生き抜くヒントは「地理」にあります。地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
本連載は、「地理」というレンズを通して、世界の「今」と「未来」を解説するものです。経済ニュースや国際情勢の理解が深まり、現代社会を読み解く基礎教養も身につきます。著者は代々木ゼミナールの地理講師の宮路秀作氏。「東大地理」「共通テスト地理探究」など、代ゼミで開講されるすべての地理講座を担当する「代ゼミの地理の顔」。近刊『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』の著者でもある。

中国がアフリカに経済援助! なぜ?
中国のアフリカへの経済援助は、想像以上に「昔から」行われていて、近年さらにその額を増やしています。しかし、実は先進国と比較するとまだまだ額は少ないのです。
1956年以降の中国のアフリカへの経済援助額は440億人民元。日本のおよそ半分の金額です。中国がアフリカに対して積極的に行っているのは投資と貿易です。中国の対アフリカ輸出額は2002年に50億ドルでしたが、2022年には1650億ドルと拡大しています。資源開発に対する投資はよく耳にする話です。
しかし中国は、資源などの埋蔵が見られない国にも援助額を増やしています。これは対台湾戦略の1つであり、政治的・外交的な側面を持ち合わせています。要するに、北京政府を正統な国家であると承認してもらうためです。アフリカ諸国の中で、台湾と外交関係を有する国は54カ国中、エスワティニ王国だけです。このように、中国のアフリカ大陸への経済援助は「外交」であり、それを基礎として中国企業の資源獲得につながっていくのです。
アフリカで売られる中国製自動車
アフリカへの輸出や政府による海外ビジネス促進策は2025年現在も変わりません。さらに近年、中国の自動車輸出は急伸しており、2018年には生産台数に対して3.7%(104万台)だった輸出割合が、2022年には約11%(310万台)と大きく拡大しました。電気自動車(EV)を含む新エネルギー車の導入も進み、低価格帯のモデルがアフリカで支持を得ています。性能面では日欧米車に及ばぬ点があるものの、政府支援を背景に海外進出を強化する動きは当面続く見通しです。
特に中東やアフリカ市場への進出意欲が高く、ブランド力よりも価格優位を武器にシェアを伸ばしつつあります。近年はハイブリッドやEV分野でも急速に技術を蓄積しており、アフリカのみならず欧州や中東への輸出増も注目されています。
中国の急激な経済成長はここ十数年の話。そのため中国企業は、海外ビジネスに対する経験がまだまだ浅いといえます。そこで政府が支援して海外投資を促しているのです。
(本原稿は『経済は地理から学べ!【全面改訂版】』を一部抜粋・編集したものです)