
セブン-イレブン(以下、セブン)が5月から展開している「お値段そのまま!人気商品増量祭」は、キャンペーンという名の「裏切り」だ。そんな小さなことで……と思うかもしれないが、セブンの良質な商品に期待していただけに、失望した人たちも多い。セブンが挽回するために、今何をすべきか提案しよう。(イトモス研究所所長 小倉健一)
期待外れのセブン、キャンペーンが逆効果
とみ田監修豚ラーメンのチャーシュー1枚、冷たいまま食べるチキン南蛮のタルタル2倍、コールスローサラダのコーン2倍……。一応は「増量」だが、見た目も満足感も誤差の範囲でしかない。SNSでは「焼け石に水」「気づかないレベル」と揶揄され、「セブンはケチ」「上げ底の再来」「ショボすぎて笑う」などと冷笑の嵐が吹き荒れた。
一方、ファミリーマートはファミチキを40%ほど増量させるキャンペーンを昨年展開したり、ローソンもプレミアムロールケーキを47%増量したりして拍手喝采を浴びた。
セブンも実際に増量しているのだが、「増やしたのはタルタルチキンのタルタルソースの方」というセコい話で、客が「どこが変わったのか」と戸惑ってしまう状況だった。

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商品パッケージに貼られた「増量シール」がなければ、誰も気づかなかったかもしれない。つまり、同キャンペーンは、演出過剰としか言いようがなく、すべてを台無しにしてしまったのだ。
このような「期待外れの体験」によって生まれた感情が起こす行動について、マルセル・ゼーレンベルグらが1999年に発表した論文『サービス提供とあるべき姿の比較:後悔と失望に対する行動反応(Comparing Service Delivery to What Might Have Been)』が核心を突いている。同研究では、サービスに対して感じる「失望」は、口コミでの否定的共有という形で顧客行動に直結することを明らかにした。企業側に失望させた責任があると認識された場合、行動に結びつきやすいというわけだ。
つまり、「セブンはケチだった」「これで増量なのか」といった投稿がSNS上で爆発的に拡散したのは、まさにこの構造による。消費者は「自分の選択ミス」ではなく、「企業が裏切った」と感じたときに、その怒りを外部に伝播させるのだ。セブンの増量施策は、失望の連鎖を生み、その失望が可視化され、SNS時代にあって、さらに燃え広がった。