泣きながらカレーを作った夜、健太郎(高橋文哉)が黙っていた“ほんとうの理由”【あんぱん第47回レビュー】『あんぱん』第47回より 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第47回(2025年6月3日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

太平洋戦争が
はじまった

 軽やかだけど、どこか不穏で耳に残るラジオのお知らせ音。

 アナウンサーがいっさいの感情を抑制し、明晰に情報を語る。

 昭和16年(1941年)12月8日、日本はアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入った。

 太平洋戦争のはじまりだ。

 真珠湾を日本が奇襲攻撃したことがきっかけである。

 尋常小学校は国民学校と名前を変えた。

 第46回でのぶ(今田美桜)は生徒たちに「戦争に勝って終わったとき、先生にはしたいことがあります。それは乾パンではのうて、あんぱんをみんなと一緒に食べることです」と言っていた。屋村(阿部サダヲ)がいなくなったのと、結局、パンの材料が手に入りづらくなってお店は休業に。

 仕事がなくなったが、乾パンづくりによって生計を立てることができているようだ。屋村のおかげでもあるし、結果的には婦人会の世話役的存在・民江(池津祥子)のおかげでもあるだろう。民江がニヤリとしながら陸軍に勝手に頼んだから。それが意地悪なのか親切なのか民江の真意は不明であるが。

 本格的に戦争がはじまり重苦しいなか、第47回ではいい場面がふたつあった。