「マニュアル」や「必勝パターン」に頼って仕事をする人に見えていないもの写真はイメージです Photo:PIXTA

優秀な人は、なぜ同じ仕事をしていても成果をあげられるのか。彼らが無意識に持っている「暗黙知」を共有すれば組織全体を成長させることができるが、それを言語化してもらうためには、問いかけにちょっとしたコツが必要なのだという。※本稿は、安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(テオリア)の一部を抜粋・編集したものです。

事業の成長に不可欠な
「ナレッジマネジメント」

 組織の学習文化づくりに必要な「学習観のすり合わせ」と「フィードバック」について、重要なのが、組織内の「知」を管理し、組織レベルでのさらなる学習を促進していく「ナレッジマネジメント」です。

 新たな価値創造には「知の蓄積」が欠かせません。ナレッジマネジメントが機能していない組織では、体制が変わったり人が辞めたりするたびに知が失われます。なかなか組織が賢くなっていかないので、当然ながら事業の成長や文化の成熟が進みません。

 他方で、ナレッジマネジメントの考え方は、もともと軍事的世界観の下で発展してきたものでもあります。

 その背景にあったのは、1990年代のアメリカで進んだ大規模なリストラでした。景気後退の影響を受けたアメリカの企業では、大量の従業員を解雇する必要に迫られましたが、リストラされた人の業務がうまく引き継がれず、現場が回らなくなるなどの問題が頻発したのです。